この記事の結論
プロジェクトが壊れる原因は、スキルやツールだけではありません。文化が言語化されていないことも、大きな火種になります。
私は10年以上、炎上案件の鎮火を仕事にしてきました。
業種、規模、メンバーの能力は、案件ごとに大きく違います。
ただ、壊れる現場には、ひとつの共通点がありました。
「うちの判断基準は、こうです」と、誰も言えないことです。
文化とは何か、なぜ言語化が必要か
文化とは、空気でも、雰囲気でも、ロゴでもありません。
文化とは、判断の積み重ねが、組織の中で共有されている状態です。
「うちは、こういう仕事は引き受けない」
「うちは、こういう品質を守る」
「うちは、こういう時は撤退する」
これが文化です。
そして、これらは言葉にしないと、共有されません。
鎮火現場に共通する、ひとつの状態
炎上した現場に入ると、必ず聞こえる言葉があります。
「言わなくても、分かると思ってた」
「常識で考えたら、こうじゃないか」
「自分は、こういう前提で動いていた」
全員が、別の前提で動いていたのです。
これが、暗黙の文化に頼った組織で必ず起きる現象です。
書かれていないから、人によって違う。
違うことに気づかないまま、案件が動く。
ある時点で、ズレが顕在化する。
それが、火です。
補正が現れる本当の理由
ベテランがプロジェクトに入ると、現場の動きが整います。
若手だけのチームと違って、判断のばらつきが減る。
これは、ベテランの能力ではありません。
ベテランの中に、過去の組織の文化が残っているからです。
ただし、それは個人に依存しています。
ベテランが現場を離れたら、補正は消えます。
組織として、文化を残すには、
- 言葉にする
- 繰り返し伝える
- 例外を判断したら、なぜそう判断したかを記録する
これを、経営者がやらないと、文化は人と一緒に出ていきます。
海外と日本の、決定的な違い
海外の現場で仕事をしていると、議論が「明文化されているか」を最初に確認します。
- ポリシーがあるか
- 行動規範があるか
- 役割と責任が文書化されているか
ない場合は、「では、これから決めましょう」と、まず合意形成から入ります。
日本の現場では、ここを飛ばす傾向があります。
「みんな、分かってるよね」で進める。
この差が、複数の組織が関わる時に、決定的な火種になります。
私はグローバル小売の店舗IT導入を、複数国・2000店舗超の現場で動かしてきました。
そこで何度も見てきたのが、この違いです。
衝突を、避けない
文化を言語化することは、衝突を呼びます。
「うちは、こういう仕事は引き受けない」と書けば、
「いや、それはやるべきだ」という声が必ず上がります。
ここで衝突を避けると、文化は曖昧になります。
衝突を引き受けた組織だけが、文化を持てます。
経営者の仕事は、この衝突を引き受けることです。
衝突を避けて、玉虫色の言葉でまとめる経営者の組織には、文化は残りません。
自社でさえ、できていなかった
私は、16年目を迎えた自分の会社で、これをやれませんでした。
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クライアントには「文化を言語化しましょう」と言いながら、
自分の会社では、暗黙のまま動いていた。
廃業して気づいたのは、自分が言語化を後回しにしてきたことでした。
判断は、私の頭の中で完結していた。
社員には、結果だけが届く。
プロセスは、誰にも残らない。
これが、文化が育たない構造でした。
Construct Wayとは何か
いま、株式会社Constructでは「Construct Way」という言葉を、最初に作っています。
中身は、
- 引き受ける仕事の基準
- 引き受けない仕事の基準
- 判断主体の所在
- 例外を判断する基準
これを、最初に文書化する。
案件が動くたびに、参照する。
判断のたびに、更新する。
株式会社Paysanneでやれなかったことの、やり直しです。
曖昧なまま放置するより、先に線を引く
文化を言葉にすることは、不完全です。
書いた瞬間に、書ききれていないことが見えます。
ただ、不完全な文書が、暗黙の前提より、はるかに価値があります。
不完全でも、議論の起点になる。
書いてあれば、修正できる。
書いていなければ、そもそも議論にならない。
経営者の仕事は、完璧な文書を書くことではありません。
最初の線を引くことです。
よくある質問(FAQ)
Q. プロジェクトで文化の明文化が重要な理由は?
A. 判断主体や前提が組織内で共有されていないと、火種になるからです。
Q. 暗黙の文化は、何を引き起こすか?
A. 全員が別の前提で動くことになり、ズレが顕在化したときに火が出ます。
Q. ベテランが現場を整える、本当の原因は?
A. ベテランの中に過去の組織の文化が残っているからです。能力ではなく、文化の効果です。
Q. 海外の現場と日本の現場の違いは?
A. 海外は明文化を最初に確認します。日本は「言わなくても分かる」で進める傾向があります。
Q. Construct Wayとは何か?
A. 引き受ける仕事/引き受けない仕事の基準、判断主体の所在、例外判断の基準を文書化したものです。
Q. 不完全な文書でも、価値があるのか?
A. 暗黙の前提よりは、はるかに価値があります。最初の線を引くことが、経営者の仕事です。