AI時代に問われる、3つの『せんとうりょく』——戦闘力・先闘力・銭闘力

2026年5月11日

この記事で伝えたいこと

AI時代に、経営者が鍛えるべきは「せんとうりょく」です。

戦闘力(本気で向き合う力)
先闘力(誰よりも先に動く力)
銭闘力(一円を稼ぐ重みを忘れない力)

AIが進化しても、最後に判断し、動き、稼ぎ、責任を取るのは人間です。
その土台が、「せんとうりょく」です。


AI時代に、経営者に求められるものは、たくさんあります。
リーダーシップ、意思決定力、数字を見る力、人を動かす力、未来を描く力。
そうしたことは、さまざまな媒体で論じられています。

もちろん、どれも大事です。

ただ、現場とAIを行き来しながら仕事をしていると、最後に問われるものはもっとシンプルだと感じます。

それは、「せんとうりょく」です。

戦闘力。
先闘力。
銭闘力。

本気で向き合う力。
誰よりも先に動く力。
一円を稼ぐ重みを忘れない力。

AIが進化した今、調べること、整理すること、比較すること、文章にすることは、以前よりも圧倒的に速くなりました。
ただし、経営者の仕事が軽くなったわけではありません。

むしろ、最後に何を決めるのか。
どこまで現場に向き合うのか。
どうやって事業として成立させるのか。

そこが、よりはっきり問われるようになったと感じています。


DeNA時代に、人前で初めて話した言葉

『好きな言葉は、「せんとうりょく」です』

これを見たら、DeNA時代の仲間はおそらく吹き出すと思います。
私がこの言葉を人前で話すようになったのは、DeNA時代からでした。

転職した初日の挨拶でも、社長の南場さんや役員の方々が揃う自己紹介の場でも、好きな言葉は「せんとうりょく」だと話していました。
仕事の中でも、毎日、いや毎時間のように「せんとうりょく」と言いながら、チームメンバーと熱く、そして真剣にやっていました。

暑苦しい仲間ばかりでした。
みんな、本気だった。

当時のDeNAには、本当に前向きで熱い思いを持った人ばかりでした。
本当に暑苦しいくらいの熱気の塊でした。

自信を持って話す人。
即断即決で動く人。
数字に厳しい人。
事業を自分ごととして前に進める人。

あの環境では、それが普通の空気でした。

同じ時期に働いていた仲間で、その後に起業した人は、たぶん100人以上います。
同じチームにいたメンバーはみな起業し、その中には会社を上場させた社長が二人います。
起業していない仲間も、IT、AI、スポーツ、エンターテインメントなど、さまざまな領域で活躍しています。

本当に、人と環境に恵まれていました。

ただ、私が大事にしている「せんとうりょく」は、ただ強く押し切る力ではありません。

2010年にDeNAを退職する日、事業部での退職スピーチで、私は初めて「せんとうりょく」には三つの意味があると話しました。

戦闘力とは、本気で向き合う力。
先闘力とは、誰よりも先に動く力。
銭闘力とは、一円を稼ぐ重みを忘れない力。

振り返ると、あれから今まで、考えの根っこはほとんど変わっていません。
自分でも、少し驚きます。

DeNA時代に、この言葉は自分の中で仕上がったのだと思います。
事業の現場で、数字を見て、ユーザーと向き合い、サービスを動かす。
そこには、圧倒的なスピードと、収益への厳しい目がありました。

きれいなことを言うだけでは、事業は進まない。
早く動かなければ、機会を失う。
一円を稼げなければ、会社は続かない。

そういう当たり前を、毎日の仕事の中で叩き込まれました。


原点は、アクセンチュア時代の「戦闘力」

ただし、この「せんとうりょく」の原点は、さらに前にあります。
社会人になった頃、私が考えていた「せんとうりょく」は、文字通りの戦闘力でした。

どうすれば、仕事で戦えるのか。
どうすれば、グローバルで戦えるのか。
どうすれば、厳しい現場で通用する人間になれるのか。

そんな思いで、私は新卒で入社したアクセンチュアで過ごしました。

クライアントと会議室で本気で向き合う、武闘派と呼ばれていたパートナーの皆さん。
燃え盛るプロジェクトの現場で、日々走り続ける先輩たち。

若手の頃、そうした現場に参加させてもらう中で見たのは、仕事に対する圧倒的な迫力でした。

外国人スペシャリストの自信。
大きな体。
大きな声。
前に出る姿勢。

そういう姿に圧倒されながら、自分も仕事に本気で向き合おうと決めました。
いろいろな方に話を聞き、形から入ったり、真似したりしながら、自分なりに戦い方を探していました。

誰よりも自信を持てる何かを持つこと。
簡単には折れない身体と精神を作ること。
フィジカルを鍛え上げること。
それを自らに課していきました。

今も日常になっているトレーニングを本格的に始めたのは2005年。
それから20年以上にわたって、今も同じジムで、同じトレーナーの皆さんに支えられています。

今振り返っても、アクセンチュア時代は人に恵まれていました。
当時お世話になった方々の中には、いまも大きな組織を率いている方がいます。
厳しい環境でしたが、成長のきっかけが日々あふれていました。

戦闘力は、まず身体から作る。

これは、私の中で動かない原則になりました。

身体を鍛えることは、見た目のためではありません。
厳しい場面で逃げずに立つための、土台を作ること。

私にとっての戦闘力は、考え方だけではなく、身体のあり方ともつながっています。


シンガポールで広がった「先闘力」と「銭闘力」

アクセンチュアで仕事を続ける中で、戦闘力以外にも必要な要素があることを感じる機会がありました。
そう強く感じたのは、出張先のシンガポールでした。
場所は、ムスタファセンターです。

クライアントワークでは戦闘力だけでいけるかもしれませんが、ビジネスでは戦闘力だけではなんともできない。
偉そうなことを言うよりも、まず一円を稼ぐことだ。

そこには、商売の生々しいスピードがありました。

「この食材を使えば、あのメニューがすぐ作れる」
「これは早く買った方がいい」
「ジョホールバルで買う方が安い」
「この値段ではダメだ」

そんなやり取りが、あちこちから聞こえてきました。
そこには、会議室にはない商売の速度がありました。

誰かの承認を待つのではなく、その場で見て、その場で比べ、その場で決める。
しかも、その判断が、そのまま利益に直結する。

机上の戦略ではなく、物を売り、仕入れ、値段を見て、現場で判断する世界。

それを目の当たりにして、強く思いました。

事業を仕掛けていきたい。
戦うだけでは足りない。
先に動くこと。
一円を稼ぐこと。

この二つがなければ、ビジネスでは戦えない。
そう感じました。

DeNAに移り、事業の現場に身を置く中で、その感覚はさらに強くなっていきました。

戦闘力──本気で向き合う力。
先闘力──誰よりも先に動き、先に試し、先に切り込む力。
銭闘力──一円を稼ぐ重みを忘れない力。

この三つが、自分の仕事の軸になっていきました。


起業して、三つの「せんとうりょく」が原点

DeNAを退職して起業してからも、この考えは変わっていません。
それ以来、人に細かく説明することはあまりありませんでした。

自分の中で、仕事を進めるうえでもっとも大事にしているもの。
それが、「せんとうりょく」です。

Constructの仕事でも、食の仕事でも、AIの活用でも、現場の立て直しでも、発信でも、すべてこの三つにつながっています。

Constructでは、止まりかけた大型プロジェクトを再起動させる仕事をしています。
グローバル小売の8カ国2,000店舗超のIT展開を含め、業界・国・規模を問わず、現場の「鎮火」と「予防」を担ってきました。

戦闘力。
本気で向き合う。
逃げない。

先闘力。
先に動く。
先に試す。
先に失敗する。

銭闘力。
一円を稼ぐ重みを忘れない。
価値を価格に変える。
事業を続ける。

この三つが、自分の経営の軸になりました。


AI時代に、「せんとうりょく」はより大事になる

そして今、AI時代になって、この言葉の意味はさらに大きくなっていると感じています。

AIは武器だが、諸刃の剣でもある

AIは「武器」です。
それも物凄い力を持つ武器です。
ロールプレイングゲームの道具で言うならば「諸刃の剣」

人間が手で作業しているところを、圧倒的なスピードで仕上げてくれる。
これは、ポジティブな武器の側面です。

その一方で、空気感、間合い、現場の温度感など、言語化できない部分はAIには読めません。
こちらの主旨が伝わらないまま、異なる方向で、もっともらしい成果物が出てくる。

そして、それが正しいのか、誤っているのか。
その判断は、AI以前よりも複雑になります。

AIが進化すればするほど、出てくるものは整って見える。
だからこそ、それを見極める経営者の判断が、よりシビアに問われます。

経営者の仕事は、軽くなっていない

AIは、調べる、整理する、比較する、文章を作る。
これらを圧倒的に速くしてくれます。

ただし、経営者の仕事が軽くなったわけではありません。
むしろ、人間の経営者に残る仕事は、はっきりしてきました。

目の前の課題に本気で向き合うこと。
誰よりも先に動くこと。
一円を稼ぐ重みを引き受けること。

ここは、AIには渡せません。

整っていることと、現場で動くことは違う

AIが出す答えは、整っています。
しかし、整っていることと、現場で動くことは違います。

もっともらしい資料ができても、人が動かないことがある。
きれいな分析が出ても、一円にもならないことがある。
正しそうな戦略があっても、誰も責任を取らなければ進まないことがある。

AIによって、表面上は整ったものが増えるからこそ、経営者は現場で本当に動くものを見極めなければなりません。

AIが答えの候補を出す。人間が、それを見て判断する。
AIが資料を作る。人間が、現場で使えるかを決める。
AIが効率化する。人間が、何を残すべきかを選ぶ。

AI時代に必要なのは、AIより物知りになることではありません。
AIを使いながら、最後に判断し、動き、稼ぎ、責任を取ることです。

そのために必要なのが、戦闘力、先闘力、銭闘力。
この三つです。


必要な論点を、曖昧にしないために

私は、昔から声が大きいです。
体も大きいです。
そして、年々トレーニングによって強化されていることも、自分では実感しています。

そのためか、話し方が強く聞こえることがあります。
真剣に向き合うあまり、お客さまから「圧が強すぎる」と言われたこともありました。

振り返れば、20代、30代の頃は、熱量だけで寄り切ることもあったと思います。
けれども、熱量が強いだけでは、相手に伝わらないことがある。

40代になり、熱量は持ち続けながらも、論点を整理し、合意できる形を探すことを以前よりも大事にしています。

ただし、必要な論点を曖昧にすることはできません。
むしろ、明確化する力は強まったと思います。

「せんとうりょく」も、自分の中で少しずつ進化してきました。
戦闘力、先闘力、銭闘力が、互いに分かれているのではなく、融合してきたように感じています。

誰よりも早く動き、現場に入り、早く論点を見えるようにする。
これが、私にとっての先闘力です。

数字や条件も、スプレッドシートを見るだけでは終わらせません。
現場に入り、工数や実際の数を自分の目で確認する。
それが、私にとっての銭闘力です。

もちろん、現場では衝突があります。
先闘力と銭闘力だけでは乗り切れない局面もあります。
それは、クライアントワークでも自社でも同じです。

現場が動いていないのに、動いているふりをする。
数字が合っていないのに、合っていることにする。
責任が曖昧なのに、そのまま進める。
AIが出したもっともらしい答えを、確認もせずに使う。

そういうことには、向き合うべきズレがあります。

そのズレを見えるようにし、事業として成立する形まで持っていく。
最後まで責任を持つ。
その実行を支えるのが、私にとっての戦闘力です。

熱量が強く伝わることはあります。
それでも、現場で起きているズレを曖昧にしたまま進めることはできません。

必要な論点を見えるようにする。
数字を確認する。
関係者が納得して進める形を探す。
そのために、私は簡単には妥協しません。


AI時代に、経営者は何を体得するのか

私の答えは、「せんとうりょく」です。

本気で向き合う。
誰よりも先に動く。
一円を稼ぐ重みを忘れない。

この三つを、自分の現場で鍛え続けること。

それが、AI時代に経営者として生きるための土台だと考えています。

戦闘力。
先闘力。
銭闘力。

この三つを、これからも自分の仕事の中で鍛え続けていきます。


よくある質問(FAQ)

Q. 「せんとうりょく」とは何か?

A. 戦闘力(本気で向き合う力)、先闘力(誰よりも先に動く力)、銭闘力(一円を稼ぐ重みを忘れない力)の三つを指します。

Q. なぜAI時代に「せんとうりょく」が重要になるのか?

A. AIが整った答えを速く出すからこそ、最後に判断し、現場で動かし、稼ぎ、責任を取る人間の力が、よりはっきり問われるためです。

Q. 先闘力とは、具体的にどう動くことか?

A. 誰よりも早く現場に入り、先に試し、先に失敗し、論点を早く見えるようにすることです。

Q. 銭闘力は、机上の数字とどう違うのか?

A. スプレッドシートを見るだけで終わらせず、現場に入り、工数や実数を自分の目で確認します。一円を稼ぐ重みを忘れない姿勢を指します。


この考え方に関わる仕事

この考え方は、Constructのプロジェクト診断・予防・鎮火、そして食のビジネス診断にもつながっています。

プロジェクト診断・予防・鎮火(株式会社Construct)

食のビジネス診断(一般社団法人ジャパンフードクリエイティブ協会)

TakafumiMurata村田崇文

村田崇文 / Takafumi Murata

株式会社Construct 代表取締役
一般社団法人ジャパンフードクリエイティブ協会 代表理事

アクセンチュア、DeNAを経て独立。
食の現場、店舗IT、グローバル小売、金融、大手EC、AIツールの検証を行き来しながら、現場のズレを判断に変える仕事をしています。

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