この記事の結論
現場を見ない経営は、必ず失敗します。
正確には、いずれ判断を誤ります。
私はそれを、自分の会社で経験しました。
私は炎上したプロジェクトを鎮火させたり、予防するためにプロジェクトをマネジメントする「PMの専門家」でした。
それでも、自分の会社では失敗しました。
専門知識ではなく、現場を見る習慣が、足りませんでした。
事業を、統合した
私は2010年に創業し、16年目を迎えた食のクリエイティブ事業を展開する会社を、2025年に統合しました。
発展的統合という言い方もできます。
ただ、率直に言えば、これまでの形では続けられなくなったから、止めたのです。
手続き上は「廃業」でした。
手探りでスタートし、食のさまざまなフィールドに挑戦しながら、撮影、レシピ開発、弁当事業へと広がりました。
キッチンスタジオを構え、店舗も持つ。食について幅広く挑戦していました。
事業は広がっているのに、私の視野は小さかった頃のままでした。
その結果、見えていないことだらけになっていました。
統合の判断には、2つの側面があった
この判断には、2つの側面がありました。
ひとつは、AIの進化によって、食のクリエイティブ事業の前提が変わったこと。
もうひとつは、自分自身が現場を見切れず、事業の内側で起きていたズレを判断に変えられなかったことです。
この記事では、後者について書きます。
AI時代にどう事業を絞ったかは、別の記事「AIと同じ土俵では戦わない。2010年に創業した事業を、16年目に統合した理由」で整理しています。
外からみたら、順調そのもの
廃業に向かう数年、外から見ると、私の事業は「順調そのもの」のように見えていたと思います。
多くの食品メーカー様のクリエイティブを担い、弁当事業はメディアにも出て、営業日は連日完売。
ただ、内側で起きていたのは、混乱でした。
判断が遅れている。
納期が遅れている。
現場の声が届いていない。
現場のズレを、自分で握りつぶしている。
これは、構造の問題でした。
PMの専門家が、自社の経営で失敗した理由
私はクライアントワークでは、プロジェクトの構造を見て、リスクを早期に拾うことを仕事にしてきました。
グローバルでのDXプロジェクトの推進、金融機関のWeb全面リニューアルなど、外から構造を見る目は訓練されていました。
しかし、自分の会社では失敗しました。
外から見る目を、自分の会社には使えていなかったのです。
毎日見ているからこそ、ズレに気づかない。
これは、能力の話ではなく、距離の話です。
会社経営は、巨大なプロジェクトである
会社経営は、長期で進む巨大なプロジェクトです。
スコープも、ステークホルダーも、変動が大きい。
PMの専門家であれば、これくらい分かると思っていました。
しかし、現場を見ていない人には、分からないのです。
自分自身が、その「現場を見ていない人」になっていました。
海外にばかり目を向け、足元がぐらついていることに気付いていなかった。
いや、気付いていても「なんとかなるでしょ」と思っていました。
現場を見ないと、何が起こるのか
3つのことが起きます。
1. 判断が、後手に回る
ズレが顕在化してから動くので、選択肢が減っている。
2. 信頼が、静かに離れていく
声に出さないまま、人は離れる。気づいた時には遅い。
3. 数字が、後から効いてくる
売上や離職率は、構造の遅行指標です。動き始めてからでは、止められない。
違和感は、出ていた
廃業を決めた半年前、いま振り返ると、ズレはずっと出ていました。
「忙しいから、後で考えよう」
「予定が立て込んでいる」
「担当者がきちんと進めているはずだ」
どれも、もっともらしい理由です。
ただ、現場のズレを見て、行動しないことは、信じることではありません。
それは、放置です。
現場で確認すべき、7つの異常サイン
私が引き受けた炎上案件と、自分の廃業の両方で、共通して出ていたサインです。
1. 期初・見積りの乱れ
スケジュールやコストが、初期計画から大きくズレている。
2. 工具・素材の整備不足
作業に必要なものが、現場まで届いていない。
3. 沈黙が貫かれているプロジェクトルーム
誰も発言しない。質問が出ない。会議が儀式化している。
4. 共有スペースの荒れ
物が散らかっている。共用ツールが壊れたまま放置されている。
5. 照明・トイレの異常
設備が壊れたまま、修理されていない。メンテナンスの判断主体が、消えている。
6. 売り場の乱れ
商品の並び、案内、清掃。利用者から見える部分が、劣化している。
7. 離反とズレの連続
退職、降りる、距離を置く、態度が変わる。これらが連続して起きている。
どれも、能力の問題ではありません。判断の問題です。
私自身の現場で、経営判断を変えた、3つのマネジメント行動
廃業の判断のあと、自分の動き方を変えました。
1. オフィスを縮小した
複数あった拠点を全て集約し、皆が集まれるようにしました。
それまでオンラインMTGが中心になっていたものを、毎週メンバーが必ず集まる場に変えた。隔週では、一緒に外を歩く。
距離を、物理的に取り戻しました。
2. 議題を、構造から組み立てた
数字より、現場で起きているズレを、最初に出してもらう構成に変えました。
症状ではなく、構造から話すようにしました。
3. クライアントワークの基準を、自社に適用した
クライアントには「外から構造を見ましょう」と言っているのに、自社では同じことをしていなかった。
外向けの基準を、自分の会社にも適用するようにしました。
鎮火と診断、なぜ、サービスにしたか
私はいま、Constructで4つの仕事をしています。
- 鎮火 ── 火が出ている現場の立て直し
- 診断 ── 動き出す前に、構造を見にいく
- 予防 ── 火が出ないように伴走する
- 仕上げ ── AIやシステムが出した答えを、現場で使える品質まで人間が整える仕事
この4つは、自分の失敗から組み立てました。
特に鎮火と診断は、自分の会社で「もっと早く外から見ていれば」と思ったところから、始まっています。
私の失敗を、他の会社で繰り返してほしくない。
だから、サービスにしました。
どこから入るか
どこから入るか 現場のズレが見え始めている段階なら、診断から入ります。
火種が見えている場合は、予防として伴走します。
すでに火が出ている場合は、鎮火から。
食のクリエイティブで、AIの後を整える仕事は、仕上げを見ます。
よくある質問(FAQ)
Q. 現場を見ない経営は、なぜ失敗するのか?
A. ズレに気づくのが遅れるからです。発見が遅れた時点で、選択肢が減っています。
Q. 「現場を見る」とは、具体的に何をするのか?
A. 現場に物理的に行き、現場の声を直接聞き、設備や挙動のズレを観察することです。
Q. プロジェクトと経営、どこで重なるのか?
A. 構造は同じです。判断主体、ズレの経路、複雑性。3つの共通点で見ると、同じものが見えます。
Q. クライアントワークでできていたことが、なぜ自社ではできなかったのか?
A. 距離が近すぎるからです。毎日見ているものほど、外から見る目を失います。
Q. 忙しい中で、異常サインを最短で確認するには?
A. 7つのサインを、週次で5分だけ確かめてください。週次の最大の防御線です。